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私は力一杯に叫ぶと部屋から一目散に逃げ出した。
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「お前さぁ人を起こすのに耳元で叫ぶのはヤメロ。俺の鼓膜が破れたら今後のサッカー人生に響くだろ?」
自転車を漕ぎながら彼方が淡々と言う。
私は彼方の肩に掴まって立ち乗りしていた。
私達の高校は自転車で約20分ほどの距離があるため、自転車通学が義務付けられてはいたんだけど私は自転車に乗る事が出来ない。
だったらバスに乗ればいいと担任にも言われたけどイヤ。
朝の通学通勤ラッシュの人がわんさかいるバスに私は耐えられない。
要は人混みが苦手なのだ。
だからこうして毎日彼方と一緒に登校しているわけ。当然下校も一緒。
「だってアンタを普通に起こしてたら私の皆勤賞がなくなるのは目に見えてるから毎日起こし方を工夫して…」
「昨日は確かサッカーボールを使いやがったよな?」
「まあ気にするな青少年♪」
「そう言うなら青少年の部屋にズカズカ入り込むな!お前は一応女だろ!」
「じゃあどうぞ遅刻してください?っていうか昔からの習慣に何文句つけてんのよ?」
「だって…俺達はもう17になるし‥年頃だろ?」
「だから?」
今更何を言うか。アンタには私がいなくちゃだめでしょうが。
「だからそろそろ‥お互いの事考えるべきなんじゃねぇの?」
「私がいなきゃ起きないクセに何偉そうな事言ってんの?」
「───すみませんね‥偉くて」
木陰の坂道に入り涼しい風が髪を撫でた。
彼方が何でこんな事言い出したのかはわかんないけどそれまでで話は打ち切られて私達二人は学校に着くまで無言になった。
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