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私は彼方の自転車の後ろの荷台の所に座って暇を持て余していた。
──遅い。‥まだ呆然としてるのかしら?
私は足をぶらぶらとさせた。
暇…メールしてやろうかな?
そう思って携帯を取り出したその時だった。
「──あ。」
彼方の姿が見えた。眠そうに、欠伸しながら歩いてこっちに向かっている。
私はぴょんっと自転車から降りて彼方に嫌味の1つでも言おうかと彼方に向かって歩きだした。
「岸本、先輩っ…//」
「──え?」
あと数メートル…という所で私の足は止まった。
裏庭から自転車置き場までの道に体育館と渡り廊下がある。
普段は渡り廊下は靴のまま歩いちゃいけないんだけど彼方の場合はそんなの無視だ。
渡り廊下を靴のまま歩いて自転車置き場に行く方が近道だから。
だからいつものように堂々と靴のまま歩いていたのだろう。
いつもと違う事がただ1つ。
───小柄なショートヘアが可愛らしい女の子が大胆にも彼方の背中に抱きついていた。
私は自転車置き場を出て彼方との距離はもう2、3メートル程しかないからさっきよりも様子がはっきりわかってしまった。
「ご、ごめんなさい突然っ…でも──あたし、あたしっ…」
「その声は…美里ちゃん?」
「は、は…はいっ‥//」
『美里ちゃん』と呼ばれた女の子は彼方から真っ赤になりながら離れた。
彼方は『美里ちゃん』の方を向いてた。
───反対を向かれてしまったから彼方が今どんな顔をしているのかが見えない…
「先輩…あたし‥その…っ‥実は…先輩にお話があるんですっ‥//」
「話?──何?」
「あたし…入学してからずっと‥先輩の事見てきました…あたしっ──岸本先輩が好きですっ////」
「えっ?」
話の内容は丸解りだった。
『美里ちゃん』が何をしたのかも彼方がどんな目で見られてたのかも全部、全部。
気が付いたら私は闇雲に走り出していた。
背後から小さく彼方の『美南』って呼ぶ声がしたけどそれどころじゃなかった。
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