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静かな静かな僕とミツル君だけの空間。
僕は鼻歌なんか歌いながらミツル君の為に用意したモノを準備していた。
…と、苦しげな呻き声をあげてミツル君が目を覚ました。
「あ、起きた?ミツル君、おはよう!」
思わず手を止めて僕はにこりと彼に笑いかける。
すると彼は気怠そうに目を瞬きながら呂律の回らない舌で僕に貴様は誰だと尋ねてきた。
やっぱり、わからないみたいだ。ふふふ。
「嫌だな、ミツル君わからない?僕だよ、○○だよー!ほら初等部で一緒のクラスだった○○だよ?あ、思い出してくれた?うれしいな。僕もミツル君の事忘れた事なかったよ~!」
にこにこにこ。
そう満面の笑みで言うとミツル君は顔を青くして今更なんだと拘束した腕や体を捩りながら僕を睨みつけ怒鳴りつけてきた。
ふふふ。懐かしいな、この罵声。ミツル君の声はどんなに殴られても蹴られても気絶しそうになっても、いつだって僕の耳に入って、僕の心を揺るがした。
「え?逃げたお前が今更なにしにきたんだって??あはっ、嫌だな、僕逃げてなんかないよ?僕が転校したのはとうさんとかあさんがここに通ってたら僕がいつミツル君に手を出してしまうかわからないからって、ミツル君から僕を遠ざけようとして転校させたんだよ?」
全くオヤだからってひどいよね?僕はミツル君とずっと一緒にいたかったのに。
「ねぇ聞いてミツル君。僕ずっとミツル君に憧れてたんだ。みんなを引っ張って、いつだってヒーローみたいなミツル君に。今も生徒会長してるんだよね?知ってるよ、僕。あはは。でね、話の続きだけどミツル君が僕を殴る度、ミツル君が僕を蹴る度、唾を吐いたり、服を脱がせて笑う度にね…僕、ああなんて幸せなんだろうって思ってたんだ。そりゃ最初は痛かったよ。なんでこんな事されなきゃって、思ったよ?
…でもね、ミツル君が僕に〝お前なんか死んでも解放してやんねぇ、例え地獄に落ちても遊んでやるよ〟って言われた時、僕気づいたんだ。
ああ、ミツル君は僕とずっと一緒にいたいんだなって。僕をいじめるのは僕が好きだからで、だから他の子はいじめないしだから僕だけ。僕だけにあはっ!あははははははははハハはははハハははは!!」
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