男前と女王様

3/4
前へ
/182ページ
次へ
「男子校なら下手に言い寄ってくる奴はいないと思ったんだがなぁ…」 ふぅ、と溜め息を吐く彼の様子から、僕は中学時代の彼の事をぼんやりとまた思い出し苦笑した。 共学である中学時代から彼の真っ直ぐな心に惹かれ、女子のみならず男子からも言い寄る生徒は後をたたなかったではないか、と。 確かにあの頃は女子の方が表立って言い寄る数は多かったのでそれに勢いを潰され男子はあまり彼に近寄れなかった。 しかし近寄れないとはいえ、彼の信者たちが諦めるはずもなく存在し続けていた。 それを彼は知ってか知らずか(知らないだろうなきっと)男子校へと進んだんだから、女子の抑制が無い分言い寄られるのもいざ仕方ない事だ。 「流石、おバカさんだね」 「なにか言ったか悠介?」 「いいえ?別に…」 つい漏らした素直な感想に史樹くんは素早く反応を返し僕はとぼけながら不意に鳴り出した携帯を史樹くんに謝りながらとった。 「ごめんね史樹くん。犬が心配して結構出てきちゃったみたいだからもう帰るよ」 「ああ、そうだな。俺もそろそろ帰らないと。夕方の公園は蚊が増えるからな」 携帯を切りそんな会話を僕らはすると互いに背を向け帰路へと立った。 おわり
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

289人が本棚に入れています
本棚に追加