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この世界は情報で溢れている。
俺達の仕事はその情報を全て知り、依頼されるものに見合うものを引き出し利用したり抹消したり逆に保護したりする。
呼び名は情報を売るから情報屋だったり情報と情報を橋渡しするconnectorだったり。
要は呼ぶ奴らによって様々な呼称があるってことだ。
「…っと、おかえりコヨーテ」
「!た、ただいま師匠…」
何台ものPCや俺特製の子ども達(自家製のマシン)に囲まれた俺が近寄ってきた気配に気付き振り向きもしないで声をかけてやると驚いた様子で弟子が返事を返してきた。
コヨーテ。
俺の可愛い可愛い子ども達に傷をつけやがったバカだった奴。
「チッ…師匠を脅かそうと思ったのに」
「ばぁか。お前なんかが俺を脅かそうなんざあと一億と百万回生まれ変わったって無理に決まってんだろ」
不本意そうに舌打ちをするコヨーテがこぼした愚痴に丁寧にそう俺が返してやればさらにいじけた顔をしながらもコヨーテは俺に四角い角砂糖にも似た情報バンクを押し付けてきた。
「師匠が言ってたルーガニカンパニーの最高機密の情報とその関係者の個人情報諸々。」
「ん、OKOK。ご苦労さん。これで晴れてお前も一人前の情報屋だな。おめでとうさん」
ヒョイと投げ渡されたそのバンクを俺は特に丁寧に扱うわけでもなく机に放り、コヨーテに賛辞を送った。
コヨーテは4番目の俺の弟子で、ルーガニカンパニーの情報を探り盗む事が俺が出した最終課題だった。
大企業かつ裏でも活躍しているルーガニカンパニーの内情を探る事は素人じゃ絶対無理だしだからこそ俺はコヨーテの最終課題にそれを選んだ。
しかしそれだけ。
ルーガニカンパニーの情報なんて、俺はコヨーテの課題に出すずっと前から知っている。
だから別にコヨーテが集めてきた情報は必要ない。
「…確認しねぇの?」
しかしそれを知らない、もしくはそんな事もわからないバカなのかコヨーテは俺に褒められ嬉しそにしながらも訝しげに尋ねてきた。
「今更見なくてもお前に課題を出したその日から俺はお前を見てたからその情報が確かな事はわかるからいい。そんな事より、早く荷物まとめて出て行けよ。免許皆伝してやったんだからよ」
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