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「やっ、と!やっと捕まえたぜ!レヴァ!!」
散々走ったせいかなかなか整わない呼吸も気にならないほど彼は興奮し、嬉しそうにその凛々しい顔をだらしなく緩ませぶんぶんと千切れんばかりふさふさとした尻尾を振った。
一方、捕らえられた彼は不愉快そうに眉を寄せ、その整った顔を醜くく歪ませていた。
レヴァ。真の名はレヴァ・カルネリヒはこの狼男が大嫌いだった。
レヴァは高貴な純血の生まれであることをなによりも誇りに思っていた。
だから多くの仲間達のように下等な生き物から血を奪うような真似はしなかったし、身だしなみにもキチンと気を使っていた。
が、この男はどうだ。
伸び放題、絡まり放題な薄汚い髪は見るだけで口が引きつるし、いつの時代の物だと言いたくなるような腰に中途半端に巻かれた布は思わず叫びたくなる位だ。
そんな奴にどうして私が好意なぞ持てようか。
そもそも何故こんなゴミのような男に好かれているのか。レヴァにはわからなかった。
だからレヴァは今日も吸血鬼の能力「霧」を使って彼の手から逃げようと試みた。
しかし、狼男は泣き出しそうな顔で抱き締めたレヴァの腰に顔を寄せ、くぅんくぅんと情けない声を出して必死に縋った。
「待ってくれ!お願いだ!少しだけでいいから話をさせてくれ!!」
「貴様のようなものと話すことなどない」
「いや、本当少しだからよぉ!俺、アンタに礼が言いたいんだ!!」
ぎゅう、っと服を掴まれたレヴァはその言葉に首を傾げ、狼男はここぞとばかりに話しだした。
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