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僕達は彼に焦がれて彼の元に集うようになった。
彼の気を引こうと僕達は様々な贈り物を送り、または甘言を囁いた。
総長だった柊は俺のものになれば好きな時に好きなだけ暴れたりそれを揉み消しやることもできると彼に言い寄り、
それならば俺はアンタのほしいものをなんでもやるから俺を傍に置いてほしいと、普段はおチャラけた笑みを浮かべている庭辺もいつになく真剣な顔をして言った。
そして僕が彼の為に一生尽くしても従者になってもいいと言えばそれに負けじと普段は無口でなにを考えているかわからない田所も彼の犬としてこき使っても足蹴にされても構わないと言い、
双子の紺太と碧はずっと一緒にいなくてもいいからどうか僕達を一番傍に置いてほしいとその愛らしい顔を巧みに使って彼に擦りよった。
だがやはり彼は誰にも靡く事はなく、時折僕達を値踏みするかのように見るだけですぐに興味がなくなったとばかりに目を逸らし、僕達が諦めて離れていくのを待っていた。
だけど僕達はどんなに彼に無視されそこにいないかのように扱われても離れはせず、そんな僕達を彼も鬱陶しそうに見はしていたが何故か無理に引き離そうとしたりなにか文句を言ってきたりなんて事はしなかった。
彼につき纏うようになって半年
僕達は学校が終わると同時に彼がねぐらにしていた廃屋へと足を運んだ。
本当は学校なんか行かずに彼の傍を片時も離れたくはなかったが、不服なことにそれを僕達の両親が許さなかったのだ。
そうして一刻も早く彼に会いたいと逸る思いに急かされながら僕達はねぐらにつくと彼が寝そべっているソファベッドの周りに各々座り込んだり壁に寄りかかったりとしながら彼に迷惑をかけない程度にと気を使いながら談笑をし始めた。
彼はなにも言い返したりはしてこないものの彼の整ったその美しい寝顔や規則正しく上下する胸元を見ていられる、あの時の僕達はただそれだけで彼に存在を許されている気がして満足していた。
…きっとそれぞれに心のどこかで孤高の存在である彼が誰かのモノになるなんてと諦めていたのかもしれない。
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