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「俺、小さい時にアンタに命を救われたんだ!まだ人間の形になれないくらい小さい時、アンタは親とはぐれて飢え死に寸前だった俺を拾って飯や暖かい寝床をくれた!
人という生き物(本当は吸血鬼だっだが)を警戒して何度もアンタを唸って噛みついたけど、アンタは困った顔をしながら笑って許してくれただろ!?
俺、ずっとアンタに礼が言いたくて…。あと!散歩の時に逃げ出した事もずっと謝りたくて!あの時、はぐれた親が呼んでるのが聞こえたんだ…。
アンタが嫌いで逃げ出したんじゃない。
寧ろアンタが大好きだった。俺なんかを友達だって笑って言ってくれるアンタが」
狼男が必死で話すそれを吸血鬼は目を瞬いてじっと耳を傾けていた。
「信じらんねぇかもしんねぇけど…ほら、アンタがくれた首輪、俺今でも大切に持ってんだぜ?ちょっと汚れちまったけど」
そう言い差し出された首輪は確かに自分が過去に子犬につけたもの。
『おいで、かわいいリュシュカ!お前だけだよ、僕お前のこと大好き!ずっと友達でいてね!』
思い出した記憶に照らし合わせるようにレヴァは自分の腰に縋る男を見つめた。
くすんだこげちゃ色の耳。
今まで汚いと思ってきたふさふさの尻尾。
「…リュシュカ?」
「!!レヴァ…」
思わずと言ったように名前を口ずさんだレヴァに狼男がパァッと顔を輝かせた瞬間、レヴァはサァッと霧になり姿を眩ませた。
途端に縋っていた体がなくなった狼男は驚きあたふたと周りを見渡すももうそこにはレヴァの姿はなかった。
「ああもう!あの恥ずかしがり屋め!」
消える瞬間、見たレヴァの真っ赤な顔を思い出しながら狼男は笑うと今度は逃がさないからな、と小さくこぼし遠吠えを響かせたとさ。
つづく…
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