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「さっきから言ってるだろ。
そこはそうじゃなくて……」
「ひさ子、今日のところはこれくらいでいいんじゃないか?
関根も反省してるみたいだし、最初よりはだいぶよくなってるだろ?
それに今日はまだゆりとの打ち合わせがあるし」
「岩沢さん、ありがとうございまぁす!」
「まあ確かにそうだけど……でも、またやったら今日以上に厳しくいくからな」
そんな会話を展開する教室の前についにたどり着いた。
「ちょっと邪魔させてもらうわね」
ゆりは何の躊躇もなく教室の中へと足を踏み入れる。
「なんだ、ゆりじゃないか。
本部で待ってるって話じゃなかった?」
「あなたたちが遅いからこっちから来てあげたのよ。
それに、彼にガルデモを紹介するいい機会だとも思ったしね」
髪の短い女の子とゆりが話し始める。
ゆりの言葉とほぼ同時に教室に入った俺に、もともと中にいた三人の女の子の視線が集まる。
「彼は柴田君。
死んでたまるか戦線の新メンバーよ」
「へぇ、よろしくな。
私は岩沢。で、こっちがひさ子でもう一人が関根だ」
「ああ、よろしく。
それで、そこにあるドラムは誰が叩くんだ?」
さっきまで練習をしていたようだが、ドラムのそばには誰もいない。
音もギターの者しか聞こえなかったし……。
「何言ってるのよ?
ガルデモのドラムは入江さんよ。
来る途中でもガルデモの一員だって言ってたんだから、それくらい察しなさいよね」
「……えっ?」
ゆりの言葉の意味を理解した時、俺は信じられなかった。
「まあ、実際に見てもらった方がわかるでしょう。
岩沢さん、悪いんだけど一曲だけ歌ってもらえない?
明日のリハーサルだとでも思って……」
「ああ、分かった。
特に断る理由もないしな」
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