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「…………俺は柴田。
昨日より前の記憶がないから迷惑をかける事があるかもしれな……」
意を決して話し始めた時、背後でドアノブの音がした。
誰か来たのか?
そう思って振り返ると、半開きのドアが見えた。
そしてその隙間から見える廊下にいる誰かが何かに飛ばされる様子も同じように。
「ど、どうなってるんだ、今のは大丈夫なのか?!」
「ああ、合言葉を言わずにドアを開けるとああなるの。
柴田君も気をつけてね」
「そんなこと一切聞いてないぞ!」
「今言ったじゃない。
別に柴田君の身には何も起こらなかったんだし、怒鳴られる筋合いはないと思うけど?」
何を言っても論破されそうな気がしたので、追求するのはやめにしておこう。
そう心の中で決めていると、大柄な男子が廊下に出ていった。
「えっと……突然何しに行ったんだ? あの人は」
「ああ、松下五段は吹っ飛ばされたやつを回収しにいってくれたんだよ」
「回収って……」
だがここから見る限り、その表現があながち間違ったものではないのではないかと思えてくる。
あれは人には見えないからなぁ……。
一歩間違えば自分がなっていたであろう姿からは、目が離せなかった。
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