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校舎内を歩き回ってみたものの何の手がかりもない。
俺の知り合いらしき人は何人かいて挨拶をしてきたが、それが誰なのかは思い出すことができなかった。
もちろんそれ以外の記憶についても変わらない。
もう夕暮れ時だ。これ以上校舎内にいても何も分からないままだろう。
そう考えた俺は、気づいたときに履いていた上履きのままで外へと足を向けた。
「そこのあなた、こっちに来てくれない?」
もう日が落ちてから、少しではあるが時間がたっている。
それに合わせて、外にいる学生の数も減っていた。
そんな状況で突然声をかけられたことに驚きつつ、声のした方向を見てみる。
その先には、スコープを覗きながら銃を構える一人の女の子がいた。
その異様な光景にまたも驚いていると、今度は顔だけをこちらに向けて話しかけてくる。
「あなたのことよ。早く来て」
一体何なのか分からないが、俺が記憶を失ってから初めてのちゃんとした接触にはなりそうだ。
……いや、ちゃんとしていないのかもしれないな。
当然おもちゃではあるだろうが、あんな物騒なものを持っている相手なのだ。
とりあえずは、敵意を持たれる前に従っておいたほうが得策だろう。
そう思った俺は女の子の元へと近寄って行った。
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