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話を終えて立ち去ろうとした時、関根に呼びとめられた。
「実を言うと今、ちょっと暇なんだよね。
だから私の暇つぶしってことで、柴田君さえいいなら少しギターについて教えるよ」
「ホントか? ありがとう、助かるよ!
今から夕方まで一切やることがなくて、どうしようか本気で迷ってたんだよなぁ」
「よかった、じゃあギター取ってくるから、ここで待っててね!」
そう言いながら元気よく駆けていく関根を眺める。
「それにしても、なんで突然心変わりしたんだ?」
明らかに乗り気ではなかったにもかかわらず、急に引き受けてくれた。
それは嬉しいんだが、どことなく不安になってしまう。
「やっぱり裏があったか……」
関根に二時間ほどギターの弾き方を教えてもらった後で、俺の勘が当たっていたことを思い知らされた。
「ほら、まだ全然残ってるんだからちゃんと食べてよね、柴田君」
俺たちは今、食堂に来ている。
そして目の前には、この食堂のメニューの一つが置かれている。
そう、バカみたいなサイズのパフェが目の前に陣取っているのだ。
「なんでこんなのを頼んだんだ?」
「せっかくのおごりなら、普段は絶対に食べられないものを食べたくなるじゃん」
関根は二時間の講習に対する報酬として、食堂で一品おごることを要求してきたのだ。
それくらいなら安いものだと、深く考えもせずに承諾したのが間違いだった。
関根は容赦なく、キロ単位のパフェを頼んだのだ。
味は確実にいいのだが、それでもこの量はキツイ。
「……何人かで一緒に食べればよかっただろ?
ガルデモのメンバーとかさ」
「でも、岩沢さんたちはこういう食べ物にあんまり関心がなさそうだし、みゆきちは少食だから戦力外だしさ」
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