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「唐突だけど、あなた、入隊してくれないかしら」
女の子は俺のときと同じように突然話を始めた。
男は戸惑いながらも話を聞いて、ちゃんと理解しようとしている。
「えっと……それって、本物の銃?」
しばらく話を続けていると、男はそう尋ねた。女の子は俺を見て、ほらね、とでも言うように笑ってから説明を続ける。
すると話題が、天使と呼ばれる女の子のことになっていた。
「あのさ……俺、向こう行っていいかな?」
「はぁ?! なんで?!
訳分かんないわ!
どうしたらそんな思考に至るの?! あんた馬鹿じゃないの?!
一遍死んだら?!」
女の子はそこまで捲し立ててから一呼吸置く。俺も男も、ともに何も言えずにいる。
「これは死ねないこの世界でよく使われるジョークなんだけど……どう? 笑えるかしら?」
「じ、ジョークの感想はいいとして……」
確かにあのジョークかもよく分からない発言は俺もスルーしたい。
「……少なくとも銃を女の子に向けてる奴よりはまともな話ができそうだからさ」
そう言った男に対して、女の子は少々納得のいかないような顔をする。
「私はあなたの味方よ。銃を向けるなと言うなら向けないわ。私を信用しなさい」
その言葉に男は迷いを見せ始める。目が覚めた直後の発言からすると、どうやらこの男も記憶を失っているようだ。
そのような不安な状況下で味方ができるのは心強いことなのだから当然だろう。
「おーい、ゆりっぺ!」
そうして沈黙が生まれた時、先ほど去って行った男が再びやって来た。
「新人勧誘の手はずはどうなってんだ? 人手が足りねぇ今だ、どんな汚い手を使ってでも……んん……あれ?」
やって来た男の発言を聞き、女の子は頭を押さえた。
そして勧誘をされていた男はおもむろに立ち上がる。
「俺、向こう行くわ」
「うわぁぁぁっ! 勧誘に失敗したぁぁぁっ!」
去っていく男を見ながら女の子が叫ぶ。
俺も正直に言うと向こうの女の子の方へ行きたい。
だが、どちらが正解なのか分からない今下手に動くべきではないと考えて、その場にとどまることに決める。
勧誘されていた男は天使と呼ばれる女の子の元へとたどり着き、話を始める。
すると、突然女の子の手に刃が現れ、それで男の心臓を一突きにした。
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