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「……は?」
何が起こったのか分からない俺は、そのまま固まってしまう。
「大方、死んでることを証明しろ、なんて言ったんでしょうね」
「証明? でもあれじゃあ死ぬだけ……」
「もう死んでる俺たちは、死ぬことはない。どんな怪我をしても、時間がたてば元通りってわけさ」
さっきやってきたばかりの男がそう教えてくれる。
「元通り、って……あの傷でもか?」
「おうよ。傷跡も残らないぜ」
そんな、ここでの常識を教えられた俺は、あまりの事実に言葉を失ってしまう。
もう一度刺された男と天使のいる方を見ると、天使が男をかついで移動を始めていた。
そして何も言わなくなった俺を見た男が、話しかけてくる。
「ところでさ、お前は死んでたまるか戦線に入隊するのか?」
「あんな風に人を突然刺すような奴を放ってはおけない。もしあんた達があれと戦ってるんなら、一緒に戦いたいと思う」
「ちょいと考えがずれてはいるけど問題ない、かな? とりあえずまあ、よろしくな。俺は日向」
そう言って男――日向は手を差し出してくる。
その手を握って答えると、再び口を開いた。
「そっちの傍若無人なのがゆりっぺだ」
「ちょっと、変な紹介しないでよね! 私はゆり。よろしくね。えぇと、あなたの名前は……」
「多分、だけど……柴田だと思う」
自分の名前もはっきりしないが、おそらくこれであってるはずだ。
「ああ、あなたも記憶喪失なのね。まあここでは珍しいことではないし、直に記憶が戻るだろうから安心して、柴田君」
「ありがとう。なるべく気にしないようにしてみるよ」
「よし! それじゃあ本部に向かいましょう。まだ残ってる人を紹介するわ」
そう言って歩き出すゆりについて、日向とともに歩き出した。
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