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わたしの質問に柴田部長はまた呆れ口調で小さくバカと言う。
ベッドの脇に備えてある小さな丸椅子に腰を下ろしている柴田部長はわたしの顔の前に身を乗り出した。
切なそうな柴田部長の表情。
上司にこんな表情をさせてしまうなんて……わたし、なんてダメダメなんだろう。
「桜井」
「は……い……」
一呼吸置いて、柴田部長は言葉を続けた。
「お前は今そんなこと気にするなよ」
「でも……」
わたしの言葉を遮るように柴田部長の手がすっと伸びて、わたしの前髪を優しく撫でた。
「今のお前はゆっくり休むこと。何も考えずに」
わたしの視界に再び柴田部長が現れて、蒼白だった柴田部長の顔色は少しずつ温かみを戻しているようだった。
優しくて少しだけ悲しそうな瞳。
胸が締め付けられる。
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