春に訪れ

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病室の表札を一応確認しノック する。 コンコン……。 「どうぞ。」 ドアの向こうから返事が聞こえ 俺はドアを横に動かす。 「……失礼します。」 「矢末君かぁ、今日もありがとう。」 ベッドに座る同級生。 栗色に肩くらいまで伸ばし 前髪は眉毛の上で整えられている。 俺と対照的で出席さえしていればクラスに溶け込めそうな雰囲気を持っている。 「……ほらよ、欠席連絡。」 「ありがとう。」 これが初日なら「元気か?」とか聞くけど、平日は毎日来ていると言う気も失せる。 「……じゃあな。」 足早に病室を去ろうと都島に背を向けて帰ろうとするが、 「ちょっと待ってよぉ。」 「……ん?」 「矢末君はこの後何か用事あるの?」 「……いや別に?」 「じゃあ、少し話しよ?」 都島は少し首を傾げた。 (ここで断っても次、欠席連絡を持ってきた時に気まずくなるだけかもな……) 「……いいよ。」 「やった!ありがとう」 少女は満面の笑みを浮かべた。
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