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「私達が彼の事を忘れずに、
心で思い続ければ、彼は私達の心の中で生き続ける事ができるんだ」
……彼女が俺に言った言葉。
けれども俺は彼女の言葉さえ、耳に入らなかった。
希望の輝きをも全く通さぬ程に、心を深く閉ざしていた。
アイツの未来を、軽い気持ちで奪ってしまった俺が、のうのうと自分の未来を生き続けることが出来るわけが無い。
親友を失った悲しみと、事故を引き起こした自分自身のことを思うと何も考えられなかった。
俺に出来る最善の方法は、
他人と接せず、関わらず、
もう一度同じ事を繰り返さないようにすること。
そのために俺は、誰に対しても冷たくし続けた。
それは彼女も例外ではなかった。
だが何ヶ月経っても変わらない俺の傍に、彼女は常にいてくれた。
何故? 何故、俺なんかの傍に?
そう思いつつ、ある時、俺は、共に歩道を歩いていた彼女に聞いた。
俺の傍にいる理由は何なのか。
彼女は答えた。
傍に居たいから居るだけだと。
暗く、閉鎖的になった俺を元に戻したいのだと。
彼女の声からは、優しく、強い気持ちが伝わってきた。
そして、小さな頃から俺の中にあった、彼女への気持ちを伝えたいと思った。俺は立ち止まり、振り返らずに言った。
――好きだ。昔からずっと。
伝えてから暫くの間、
彼女は黙っていた。
……いや、静かに泣いていた。
微かな声の中から「私も」という言葉だけが聞き取れた。
その時、俺は決心した。
このままでは駄目だ。
彼女の為に変わろうと。
だが彼女を抱きしめようと傍に寄った時、彼女の後ろには駆動音を鳴らしながら近づく、一台の大型貨物自動車がいた。
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