一章:目覚め

18/19
前へ
/42ページ
次へ
     それに対し、クロは当たり前だと言わんばかりに堂々と答えた。   「私は夢の住人ですからね。人の夢に入るのは勿論、この世界に現れるのも朝飯前です」    夢の住人。またあの訳のわからない単語が出てきた。   「へー、そうなんだ。 とりあえずこっちに来て」    こう理由も何もわからずに、意味不明な展開に巻き込まれるのは好ましくない。    僕は適当な返事をするとクロの手を引き、校舎の横に連れていく。    生徒達の視線が痛い……。僕が小さな女の子を、人気がない場所に拉致していくとでも思われているのだろう。      しかし今は気にしている場合ではない。夢云々が本当なら、彼女が言っていたことも真実である可能性も高いのだ。          そう。  僕が人を五人殺さないと世界が滅びる、ということも。      鳴り響くチャイムを聞きながら僕は、またため息をつく。    無遅刻無欠席が潰えた、と……。  
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加