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人はいない。ホームルームが始まったので、ざわめきもない。
静かになった校舎の側面で、僕はクロに尋ねた。
「夢の住人って何のこと?」
まずは意味のわからない単語について尋ねることにした。
クロは迷う様子もなくそれに頷く。答えてくれるようだ。
「夢の住人とは、夢の世界に住む人のことです。主に人の夢を見守っています」
まずこの時点でわからない。とりあえず、夢の住人については意味が理解できたけど、夢の世界って何だろう?
説明を聞き、更に疑問が湧いてくるのではきりがない。
「うーん。とりあえず、全部説明してくれない? まったく意味がわからなくて」
「あ、そうですね。そうでした。記憶がないんですよね」
何かに気づいたようでクロは頻りに一人で頷く。
記憶? はて、なんのことやら。
「わかりました。では説明をしましょう。基礎から全部」
首を傾げていると、クロが胸を張って宣言した。
「早速いきますよ」
彼女はそう言うとスッと手を伸ばし、僕の額に触れた。
冷たい彼女の体温を感じ、僕は自然と目を閉じる。
「あ……れ?」
――すると何故だろう。急に耐え難い眠気が襲ってきた。
立つこともできないほどの眠気に、僕は身体が傾くのを感じ……
「夢の世界でお待ちしています」
クロの声を最後に聞いて、意識を失った。
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