二章:基礎教練

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           何もなくて、何でもある。何を掴めるかは自分の持つ力次第。    目を覚ました時、何故かそんな言葉が頭に浮かんだ。   「なにここ……?」    気を失った僕が目を覚ますと、何もない真っ白な空間にいた。    不思議なことに、目を覚ました瞬間から僕は地に足を付いて立っていた。    ここはどこだろう? 知っているような気がするし、知らないような気もする。   「当たり前ですよ。ここは人間の夢の世界。誰でも知っています。覚えていないだけで」    声が聞こえた方向に振り向くと、そこにはクロがいた。    彼女は両手を広げ、笑顔を浮かべて言う。   「ようこそ文さん。 ここが夢の世界。その中心、世界の夢です」   「世界の……夢?」   「はい。全ての夢が調和し、無となった場所です。何かある気がするのに、真っ白でしょう?」    言われて僕は周りを見回す。確かに、真っ白だ。しかし何かがある気もする。何とも言い難い妙な気分だ。    だが。不思議ではあるが、それだけ。まだ夢の中であるかを確信することはできない。   「信じていませんね。 わかりました。ではちょっと歩いてみましょうか」    こっちに来て下さい、とクロは僕を導きながら歩く。彼女の後ろをしばらくついていくと、周囲に変化が現れた。  
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