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何もなくて、何でもある。何を掴めるかは自分の持つ力次第。
目を覚ました時、何故かそんな言葉が頭に浮かんだ。
「なにここ……?」
気を失った僕が目を覚ますと、何もない真っ白な空間にいた。
不思議なことに、目を覚ました瞬間から僕は地に足を付いて立っていた。
ここはどこだろう? 知っているような気がするし、知らないような気もする。
「当たり前ですよ。ここは人間の夢の世界。誰でも知っています。覚えていないだけで」
声が聞こえた方向に振り向くと、そこにはクロがいた。
彼女は両手を広げ、笑顔を浮かべて言う。
「ようこそ文さん。
ここが夢の世界。その中心、世界の夢です」
「世界の……夢?」
「はい。全ての夢が調和し、無となった場所です。何かある気がするのに、真っ白でしょう?」
言われて僕は周りを見回す。確かに、真っ白だ。しかし何かがある気もする。何とも言い難い妙な気分だ。
だが。不思議ではあるが、それだけ。まだ夢の中であるかを確信することはできない。
「信じていませんね。
わかりました。ではちょっと歩いてみましょうか」
こっちに来て下さい、とクロは僕を導きながら歩く。彼女の後ろをしばらくついていくと、周囲に変化が現れた。
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