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僕は自室のベッドの上で、いつも通り目覚めた。
漫画が並べられた本棚、物置と化した勉強机、そして部屋に貼られたアニメのポスター。目に映るのはいつも通りの風景。
ここまでなら現実であると胸を張って言えるのだけど……。
ベッドから降り、すっかり困り果てた僕は窓の外を見る。
綺麗な夕焼けが街に広がっていた。オレンジに輝く光は、僕の部屋にも降り注いでいる。まるで僕を慰めるように優しく。
……困ったな。今日学校なのに遅刻どころの問題じゃないや。
窓枠に手を置き、がっくり項垂れる。まさか高校入学から初の欠席がこれとは。
サボリは中退の始まりとも言われるし、これから気を引き締めないとすぐ社会の底に――
「いらっしゃいませ」
黙ってくれ。僕はまだ社会の底辺にはいらっしゃってな
「――って、だ誰!?」
出所不明の声に慌てて振り向く。
ドアの前に、見慣れない人間がいた。
小さい女の子だ。黒く長い髪、蒼い目、ゴスロリ風のフリルが沢山ついた黒い服。人形のような、綺麗に整った顔立ち。
……すごく浮世離れな容貌である。なんだこの女の子は。
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