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春の月が、まだ僅かに咲き残る桜を照している。
いつ頃降りだしたのか、その桜を散らすように降る春雨。俺は鞄から折り畳み傘を取り出す。
俺の一番嫌いな天気。
2年前の出来事以来、俺は雨が大嫌いだ。
雨の日は嫌でもあの日を思い出す。
あれから2年。
俺、柳田俊は月光高校で2年目の学生生活を過ごしている。
時計を見ると、もう10時を回っていた。
俺は今、一人暮らしをしている。
親からの仕送りがあるので、お金には苦労していない。
けど、何かあった時のためにとバイトをしている。
バイト先から今住んでいるアパートまでは徒歩10分程。
普段はまぁまぁ人通りの多いこの道も、この時間になるとほとんど居ない。
聞こえるのは、傘にあたってはじける雨の音だけ。
そんな音を聞きたくないので、俺はiPodを取りだし、お気に入りのYUIの曲を聴く。
あぁ。早く家に帰ってシャワーを浴びたい。
早くこの雨の中から抜け出したい。
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