出会い

2/9
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
春の月が、まだ僅かに咲き残る桜を照している。 いつ頃降りだしたのか、その桜を散らすように降る春雨。俺は鞄から折り畳み傘を取り出す。 俺の一番嫌いな天気。 2年前の出来事以来、俺は雨が大嫌いだ。 雨の日は嫌でもあの日を思い出す。 あれから2年。 俺、柳田俊は月光高校で2年目の学生生活を過ごしている。 時計を見ると、もう10時を回っていた。 俺は今、一人暮らしをしている。 親からの仕送りがあるので、お金には苦労していない。 けど、何かあった時のためにとバイトをしている。 バイト先から今住んでいるアパートまでは徒歩10分程。 普段はまぁまぁ人通りの多いこの道も、この時間になるとほとんど居ない。 聞こえるのは、傘にあたってはじける雨の音だけ。 そんな音を聞きたくないので、俺はiPodを取りだし、お気に入りのYUIの曲を聴く。 あぁ。早く家に帰ってシャワーを浴びたい。 早くこの雨の中から抜け出したい。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!