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取り敢えずどうしよう…。
渡そうか…、それとも目立つところに置いとこうか……。
そう思いながら、俺は彼女のほうを振り返った。
彼女は暗闇の中、ずぶ濡れになりながらも必死に探していた。
雨足はそんなにそれほど強くはない。ずぶ濡れになるほど長時間探し続けているのだろう。
「あのっ、すいません。」
気付いたら、自然と声をかけていた。
自分でも驚いている。自分から話しかけるなんて、滅多にないことだ。
しかし、彼女は黙々と探し続けている。どうやら俺の声が聞こえてないらしい。
俺は声の聞こえるように、彼女のほうに近づいていく。
…俺は何をしているんだろう。
いつもならこんなことはしない。
でも彼女の懸命な姿を見た途端、居ても立ってもいられなくなったんだ。
「あの、すいません。」
ある程度声の聞こえる範囲に近づいた俺は、さっきより大きめの声で、再び彼女に声をかけた。
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