思えば遠くに来たもんだ。

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俺と熊の距離、約5メートル。奴も俺が戦う気になったのが分かるようだ。さっきまで立ち上がって此方を威嚇していたのに、今は四つ足に戻り、此方を睨み付けている。 ヤバい。 立ち上がった熊と戦う気になっていたが、熊は基本突進型だった……。ええぃ、ままよ。 熊はクラウチングスタートのように静かに力をためている。次の行動は、俺へのダッシュ。 プラン変更ッ!!至急至急ッ!!どうする?さぁ、どうする?いくら肉体が強化されてても、中身は殺しあいの経験なんか無いんだから。 ドンッ! 爆発的な熊のふみこみから、弾かれたように赤い弾丸となり俺に迫る。圧倒的なスピードは、一瞬にして俺の間合いに飛び込み、そして頭を噛み砕かんと大口を開けて迫る。 どうする?殴るのか?蹴るのか?わからない。とにかく怖い。 次の瞬間、俺は自然と身体が動いていた。 今まさに噛み付こうとした熊の頭を―― メキョ!グポッ!! 俺は熊の下から突き上げるように膝を奴の顎に突き刺し、同時に脳天に肘をたたき落とした。 "蹴り足ハサミ殺しッ!!!!!!" 某格闘漫画の空手家がやっていた技だ。本来は蹴りにきた相手の足を、膝と肘で挟むように潰すという、えげつない防御に見せ掛けた攻撃だ。充分に相手を呼び込んで、一瞬で潰す高等技術である。 熊の頭に俺は咄嗟に応用した結果、奴は自らの牙で舌を切断され、白目を剥いて絶命した。 異世界で初めての強敵に敬意を表し、技に名前をつけよう。何故なら俺は魔法が支配する世界で拳で生きていくのだから。 技銘 竜のアギト そして、こんにちは異世界
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