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ふぅ、とため息ひとつ。しかし、せっかく身体を綺麗にしたばかりなのになぁ……。取り敢えず危険は去ったようなので、襲われていた白いヤツを見てみた。
……竜?
そこに横たわっていたのは、3メートル位の白い子竜だった。よくゲームや映画に出て来るような……うーん、あれだ!ゲド戦記のテルーみたいな白い竜だ。
ただ、後ろ足と羽が傷だらけになってて、しんどそうに息をしている。虫の息ってやつだな。取り敢えずこうしてても意味は無いから、傷の様子でも見るかと俺はヤツに近寄っ――
『グギャアアオッ!!ガフッ!!ガフッ!!』
……超威嚇してるんですけど。
まぁ、きっと人間は嫌いだろうな、常識的(テンプレ的に)に考えて。まぁ無視だ無視だ。俺はそのまま竜の横に胡坐をかいた。
「なぁお前。いてぇだろ?ちょっと傷を見るからおとなしくしてくれんか?」
そういいながら俺はじわじわと羽に手を伸ばした。
ガブゥ!!
「ッ!! 勇次郎ボディでも痛いものは痛いな……おい、安心しろって?な?俺はお前に何もしない。いいな?危害は加えない。大丈夫だから。なんもしないから。見るだけだから。じゃないとお前、死ぬぞ」
俺の言葉が伝わったかはわからないが、竜は恐る恐る噛み付いた顎の力を緩めていった。多分、体力も無いんだろうな。
俺は便所神に貰った特典には、たしか回復魔法が使えるとあったはずだ。取り敢えずそれでどうにかならんだろうか?
んなこと考えながら俺は竜の羽を持ち上げた。
『ギャオ……』
まぁ、痛いだろうな。後ろ足は……うわ、直径10㎝位の円形の、火傷というには生易しいほどの傷。もはや炭化してるな……。
しかし、この世界の魔法はわからんな……うーん……ええぃ、ままよ。
「……ホイミ」
うわっ、超ハズイ……ホイミとか言っちゃったし……
……ん?傷が光って少し小さくなってね?マジか。厨二という名の発作を起こした訳じゃなさそうだ。ならば――
『ベホマッ!!』
ジュブジュブ……
おおおおおお!治った!!ただ、傷が再生する過程は正直グロいな。
『ギャオ!?ギャオギャオ!?』
「くははっ!驚いてる驚いてる。取り敢えず治ったみたいだし、飛べるだろ?さぁ、おうち帰りな?んじゃ、ばいばいきーん」
俺はそうしてその場を後にした。さっきの川へ。身体を洗いに……。
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