思えば遠くに来たもんだ。

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しかしまぁ、慌てた所で倒さなきゃ死ぬという現実は変わらない訳で。多分、逃げようと背を向けた瞬間殺られる。それは間違いない。 本来、野生動物ってやつは、例えば北海道に生息する巨大な熊――ヒグマだって臆病なんだ。基本的に森では人間側がヒグマを認識する前に、ヒグマ側が人間を認識する。だいたいその状況でヒグマは逃げる。 だが、近くに子供がいたりすると、とたんにヒグマは好戦的になる。防衛本能ゆえに。つまり、人間と極力は接しないが、やむを得ない場合は襲うという事になる。 で、現在はどうよ。この熊は明らかに好戦的だよね?しかも何やらジャブのようにシュッシュッって牽制してるし……仕方ない、殺るか。便所神の特典を信じよう。ダメなら死ぬだけだもんな。 「グアッ!!ガルッ!」 お~お~興奮してるなぁ。なら、俺がお前を逝かせてやるッ!!。 俺は熊の正面に立ち、全身の力を抜いた。両手すらも拳は握らずに垂らす。 そしてイメージ 熊は身体を厚い毛皮で覆われている。多分、打撃はダメだ。どうする?どうする?俺は頭の中でいくつもの攻撃をシュミレートする。 先手必勝、懐に飛び込んで殴る――顎まで遠い。却下 袈裟切りのような熊の爪のスイングをスゥエーバックし、脇固め――体重が重いため極らない。却下 攻撃を掻い潜り、熊の膝間接にローキック。熊が噛みにきたらバックステップし、口の中に渾身のパンチを入れる――たしか熊は後足が短い。そして、それで全体重を支えている。……いけるかもしれない。許可ッ!!許可ッ!!許可ッ!! さぁ、逝こうぜ熊野郎
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