七夕物語

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父様が愛した、みんなが愛した私の母様。 私を産んで死んでしまった母様。 ―――私だけ知らない人‥ どんな人だったのか…どうして私を産んだのか、知りたい。 不意に少女は自嘲の笑みを零し、短冊を胸に抱いた。 「私ったらバカね…。こんなの書いたって叶う筈無いのに…」 どんなに願っても、いない人に会う事なんか出来ないのに――― 「――‥そろそろ戻ろうかな。」 窓の外が朱から青へと変わり始めているのを見つめ、再び短冊を掲げた。 「ごめんね?勿体無い使い方しちゃって。」 苦笑しながら呟き、その短冊へ口付ける。 ――――瞬間、 「―――はぁ?!ちょ、キャァァ――――!!!!」 突如床が消え、少女の体は闇へと吸い込まれた。再び床が戻ったがそこに少女は居らず、ヒラヒラと舞う短冊が…静かに落ちた。 >
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