入学式の朝

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「おはよ、母さん、春香、夏樹。」 2階からリビングに下りてくると、真新しい制服に身を包み、じゃれあってる春香と夏樹 そしてダイニングで洗い物をしている母親…と親父は? 「親父はどこ行ったの?」 「あぁ、お父さんは外で車を磨いてるわよ。」 「はぁ?なぜに?仕事は?」 「なに言ってるの?お父さんのイベント好きを忘れた?」 あ……… そうだった… ピカッと、頭の上に電球マークが光るが如く、思い出し頷く 「あぁ、はいはい。そういう事ね」 そういえば、小学校、中学校とイベントと名の付くものには積極的に来てたよな「あれって冬弥の親父?」とか言われてよくからかわれたもんだ。 んでもって、ほとんど俺は無視しやがってよ。 妹達が目的なら最初からそっちに行けばいいものを… おっと、そんな事考えてる場合じゃないぞ。 今日は入学式兼始業式じゃないか。 リビングの時計をちらりと見て確認する… 「んっ?…ん~?」 俺の目はおかしくなったのか? 目を擦りつつ何度も見直すが、やっぱり時計は7時を指し示している。 「夏樹ちゃ~ん?ちょ~っといいかな?」 いらつきを抑え、滅多にない猫撫で声で夏樹を呼ぶが、危機を察したか春香の後ろに隠れる 「やだ。お兄、怒ってる」 ちっ、さすがはわが妹。危機察知能力に長けてやがる。 まるでゴ〇ゴ13かシ〇ィハ〇ターかって 精一杯の笑顔を夏樹に向ける。多分二人共「キモい~」と思うくらいの笑顔で… 「怒ってない。少しイラッときたけど、悪気はないんだろ?夏樹」 安眠を妨げられたのにはイラッときたが、それくらいの事でキレるほど子供じゃない。 「ホントに怒ってない?」 春香の後ろから震えながら俺を見つめる、その眼鏡の奥の愛くるしい瞳をウルウルさせて聞き返す夏樹。 くぅ~ぅぅぅ… 可愛い過ぎるぜ妹よ。 思わず身もだえしちまったぜ。 オタクな輩が妹萌え~って言ってる気持ちがちょ~っとだけわかる、そんな気がするだけでオタクじゃないからな。 「お兄。キモい」 ボソッと春香が呟くとソファーに腰掛ける。 ぐわぁ~ぁ!! クリティカルヒット。 今のでほとんどライフポイントを持ってかれた。 「みんな、なにやってるの?ご飯よ」 タイミングのいい母親の声が、リビングに響きわたり俺達はテーブルに付く。今日は入学式と言う事でご馳走が並んでいた。
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