2ヶ月と22日目の話

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主であるリュウゾウが雛鳥学園に赴任して、今日で2ヶ月と22日が経過した。 主が道端で倒れていたと、ひふみが担いで保健室へ連れて行ってくれた。 発見者がひふみでよかったな、主よ。 今日はこんなことが起こった。 主であるリュウゾウの式神を務めることになって、20年になる私でも初めての経験だった。 突如、私の視界が白く染まったのだ。 敵襲にしてはソフトな感触、ベールとガーゼの中間のようなこの薄く白い膜はなんだ? 私の頭が答えを導き出すよりも早く、私はその薄く白い膜に引っ張られてしまう。 その先に居たものは、秋森海瑚…格闘科の男子生徒だった。 格闘科の生徒にこんな特殊能力の持ち主がいたとは、正直に驚くしかなかった。 「私に何か用か?」 「話す…のか」 式神だから話すくらいは当たり前なのだが、見た目がネコモドキという小動物ということもあって、どうやら不思議に感じたようだ。 相手は私に興味を示しているようだ。 「この白い膜はなんだ?」 「虫取り網」 言われてみれば、確かに虫取り網の形状に良く似ている。 ほほぅ…虫取り網で捕らえられる虫たちの心情は、まさに今私が体感しているこの状態なのだな。 なかなかに興味深い体験をさせていただいた。 これは元近と月詠に報告しなければ、話すだけでは勿体ない、レポートを作成するとしよう。 「出してくれ」 「あぁ、今…出す」 こうして虫取り網から解放された私は、秋森海瑚としばらく森の中で話をしていた。 なかなかに面白い生徒だ。 次に会う時は魚料理をふるまってくれるのだという、元近と月詠も一緒でいいか?と聞いたら、了承してくれた。 うむ、なかなかに良い子だ。 興味深い体験をさせてくれた秋森海瑚と私は友達になった。 森での再会が楽しみだ。
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