野球と夏恋(前半)

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暑いとにかく暑い。  太陽がマウンド上の直樹をいじめる。  直樹の体から汗が噴き出す。  直樹は最後の大会に出ている。何としても一回戦は勝ちたい。しかし、この試合大ピンチが訪れていた。七回表ノーアウト、ランナー満塁、0対0。相手にヒットを打たれてから崩れて、ファアボール二連発を出してしまった。  ここをきっちり守って最終回に逆転したい。  「ノーアウト満塁、守りやすいぞ。丁寧に一つずつ取っていこう」慎太郎の掛け声が聞こえてきた。  直樹はゆっくり両腕をあげて全身を右足だけで支えた。そして、思いっきり投げた。ボールは、空気抵抗に逆らい、きれいなバックスピンを描き、慎太郎のミットの中に吸い込まれていった。これで、ワンストライク。慎太郎からボールを返されて、カーブのサインが出た。また同じように振りかぶって投げた。またもボールはきれいな、ななめ回転をしてミットに入った。これで少し楽になった。  これでやっと追い込めた。正直、直樹の体力は限界に達していた。そのせいか、目の前がよく見えない。  もう、気力で立っている状態だ。    
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