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四月に比べて暖かな春風が吹き始めた。
直樹の心は、冷たい冬風が吹いている、暖かい風が吹きそうな気配が一切なかった。直樹の心にしとしとと雪が降っていた。
直樹は一番窓際の席で、頬に手をついて座っていた。
「おい、直樹いい加減立ち直れよ、まぁーそんなこと言ったて立ち直れなんて難しいと思うけど」ちょっと気にしてくれたように、慎太郎が話しかけてきてくれた。でも今は、「おぉ」なんて元気良くは返せる気分じゃなかった。まだ、あゆみのにフラれたことから立ち直れなかった。
「あぁーそうだよな。いい加減自分でも、あゆみを忘れようとしてんだよ」強く言うつもりはなかったが、勝手に感情が入ってしまった。
「じゃあ何してんだよ。こっちもいい迷惑なんだよ。野球じゃ練習には集中してねーし、さっきみたいにいきなりキレるし、なんなんだよ」慎太郎にここまで強く言われたのは野球以外初めてだった。
慎太郎が謝ってきた。
「あぁーわりぃ、ちょっと言い過ぎたわ」
さっきのがウソのような顔で言ってきた。
「あぁ、大丈夫。それより、早く次の授業に行こうよ」慎太郎に言われてなぜか少しすっきりした。
「そうだな、早くいくか」
「おっ、今日は調子いいな。ちょっと吹っ切れたか」慎太郎が笑ってマウンドに駆け寄ってきた。
今日慎太郎に声をかけてもらえたおかげかもしれない
「あぁ、なんか今日は気分よく投げられるよ」
「そんじゃあ、もうちょっと投げて終わりにしよう。いいだろ?」
「そうだな、ほらさっさと戻りな」冗談交じりで言った。
「ふん、そんな大口叩くんなら百五十キロ投げてみな」慎太郎も冗談を言ってきたから、二人でニヤけてしまった。
この日から、とても有意義に生活できた。みんなとばかやったり、野球にも集中できた。もちろん授業にも集中できた。自分では何もできなかった。最終的には慎太郎に助けてもらってしまった。
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