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私は何か話そうと思ったけれど言葉が一向に出てこなかった。
「中入れば? 暑いし、奢るよ」
私は断りの言葉も出ず、首を左右に振った。
「暇で暇でさ。話し相手になってよ、聞くだけでいいからさ」
半ば強引にそう言われ、断るに断れず店に入った。
カランコロンとカウベルの音が鳴り響く。空調が程よく効いていてひんやりと心地好い。
店内は年代物であろう古い調度品がセンス良く飾られていて、制服姿の私には少し不釣り合いな気もした。
窓際の席に通され、渡された茶色い革表紙のメニューを開く。
ぎっしりと珈琲の種類が書かれていたが、私にはさっぱり分からなかった。
なにせ今まで珈琲と言えば、”アメリカン”くらいしか知らないのだ。
最もアメリカンというのは飲み方で珈琲豆の種類ではないということも、後々知った。
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