プロローグ

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―――― 「……完成ッと」  しばらくして数頁に渡るレポートは完成した。沢山の文字が映し出された画面を見ながら、満足そうに椅子にもたれ掛かる。疲れが感じ取れる溜め息を吐き出して、机の上に置いてある時計に視線を移した。  気が付けば六時になろうとしていた。窓際を見ると、カーテン越しでも、わずかに明るくなっているのが分かった。窓際に行き、締め切ったカーテンを開けた。  近所の家や建物が、朝焼けで明るくなり始めていた。 「ぬっがぁ~……何とか間に合った……悠介」  ベッドで横になっている悠介を見ると、漫画を持ったまま、その漫画を顔の上に乗せて寝ていた。 「起きろ。朝だ」  無常にも漫画を取り払って揺らすが、起きる気配は見られない。試しに枕を取り払い、それを顔の上に叩きつけるが、ちょっと苦しそうな顔をしただけで、そのまま気持ちよさそうに寝息をたて始めた。 はぁ……このまま寝かせておくか  陽一は起こすことを諦めて台所に向かい、簡単に二人分の朝食を作り始めた。作っている途中、白米の良い匂いに釣られて悠介は目覚めて、そのまま朝ごはんを頂いてすぐに帰って行った。  朝食も終え、食器も片付け終えたところで大学に行く準備を始める。  出来上がったばかりのレポートを印刷し、印刷機から吐き出された数枚のレポートをまとめてバッグに入れた。  他にも本日の講義で使う教科書や、参考資料もバッグに詰める。  大学の行く準備が終えたところで、いそいそと服を着替え始める。外は寒いので、厚手のジャケットを羽織り、ざっと自分の部屋を一望した。 「よし、行きますか」  忘れ物がない事を確認し、部屋を出た。季節は秋真っ盛り。外に出ると、肌寒く感じる。ドアの鍵を閉め、いざ大学に出発。  大学に行く途中では、歩道に並ぶ木々は見事な赤や黄に紅葉している。その時に、ふと、とある神様姉妹を思い出して、向こうの世界は見事な紅葉景色が見れるのだろうか、と思った。 秋……あ、焼き芋食べたい。秋刀魚の塩焼きも良いなぁ……栗ご飯も捨てがたい……  一瞬で陽一の頭の中は食欲の秋に染まっていた。他にもどんな美味しいものがあるのか、そんな事を考えているうちに、大学の正門前に到着していた。
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