プロローグ

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 時間が早かったのか、キャンパス内には両手で数え切れるほどの学生しか見られなかった。 「やっぱ早かったか」  携帯電話を取り出して時間を見ると、まだ八時にもなっていなかった。一時間目が始まるまでたっぷりと時間はある。普通ならまだ部屋でまったりとしているか、夢の中にいるような時間帯だろう。 ……大講で寝るか  徹夜明けもあって眠い事に変わりない。大きな欠伸をして一時間目の講義が行われる場所に向かった。 ――――大講義室  目的の部屋に着き、扉を開ければ当然の如く誰もいない。大講義室は学生百人が余裕で座れるほど広い。一番乗りが少し嬉しかったのか、鼻歌交じりにいつも座る窓際の席に向かった。  手には途中で買ったホットコーヒーがあり、それを一気に飲み干してから席に着き、ささっと講義の準備をしてすぐに眠りに就いた。  時間が経つにつれ、大講義室には陽一と同じ学科の学生達が入ってきて、次の講義の予習・復習をする者、雑談をする者、週刊誌を読む者、ゲームをする者等、講義が始まるまで自由に過ごしていた。  講義が始まる五分前、悠介が悠々と大講義室に入ってきた。いつもの席に座る陽一を見つけた。
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