第一章 ザルバリアの現実

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 肌色は全体的にベージュ。健康的な四肢が鏡に映し出される。  ドレスを抱えている侍女が息を呑んだ。 「どうかしましたか?」 「い、いえ。お嬢様はいつ見てもお綺麗だなと思って。一種の芸術品にすら思えます」 「芸術品って、そんな……」  さすがにお世辞が過ぎると思って苦笑しただけなのだが、侍女は顔を青くして慌てて頭を下げた。 「も、申し訳ありません! お嬢様のことを物のように言ってしまって! お許しくださいッ!」 「気にしてないですよ。それにお世辞だと解ってても嬉しかったですから」 「お、お世辞ではありませんッ。お嬢様はこの国の貴婦人の誰よりもお美しいです。わたしがそう断言します!」  ドン、と自身の胸を豪快に叩く侍女。  自信有りげなその姿に対して、気の弱い侍女にしては珍しいなと感想を抱いていると、彼女は唐突にゴホゴホと咳き込んだ。  どうやらさっき胸を叩いたからのようで。  アリアは口許に手をやって笑ってしまった。 「ふふふ、ありがとう。それよりも早く着替えないといけないのでは? パーティーに遅れてしまいます」 「そ、そうでした。申し訳有りません、お嬢様」  謝ることが癖になっている。これもおそらく母のせいだろうが。  生まれが貴族ではないからか、そういう部分はやけに貴族の生活にこだわる癖が着いてしまっている。  解らなくもないが、だからと言って母のように侍女を痛め付ける理由は決してならないし、アリアは不必要に使用人を酷使しない。  けど、それは貴族の人間からしてみれば異例だ。アリアが少数派である。  ――お父様、わたくしは間違っているのでしょうか。  問いかけても、答えは返ってこなかった。
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