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バインツバルド家の次期当主が宣言した一言は、その場にいる全員に相当な衝撃を与えた。
勿論、アリアだって驚いた。
――わたくしが? どうして、わたくしが彼の妻にならないといけないのですか?
パーティーから二日後、アリアは自室のベッドに腰掛けながら、何度も何度も自問自答を繰り返す。
答えは全然出ないけれど。
予想だにしない展開だった。どうして彼の妻にならないといけないのか、理解も納得も了承もできない。
――わたくしがいない間に進められていた話なのでしょうか?
疑問符が付いているが、答えがあるのならこれしか他に正解は無いだろう。アリアの知らない間に、誰かが勝手に婚約の話を進めていたに違いないのだから。
だけど、いったい誰が――。
「そンなもン、お前の母親しかいねェだろうがァ」
師匠が椅子に座りながら、さも当然のように言った。
服装はパーティー会場で見たスーツ姿ではなく、小さい頃からアリアが見慣れている黒く戦闘用に特化した服だった。
実際、師匠が言う通りなのだろうけれど。
「ですが、信じられません。お母様が、わたくしに何も言わずに、勝手に婚約の話を進めるなんて……」
「お前なァ。お前の婚約の話なンだ。お前の母親しかいねェだろォが。他に誰がするってンだ、そンなめんどォな事。どうせ、お前がいつまで経っても婚約しねェから、痺れを切らして勝手に話を進めたンだろ」
まさしくその通りだ、とアリアは認めるしかなかった。
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