序章  星屑の聖座

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 雪化粧に覆われた大地。白くない大地を探す方が困難とも言える、まさに銀世界と呼べる光景。  夏には緑の草木が芽生える草原も、冬の今は雪で何もかも白く染められている。  その上に立つ、一人の女性。  顔つきから判断して、若者。二十歳を越えているかどうか曖昧なライン。身長は約百七十五センチ。防寒着に袖を通しておらず、薄手の服にマフラーを巻いているだけ。  見ているだけで寒くなる格好の女性は、腰に携えていた一振りの剣を抜いた。  足元の白さに対抗するかのような黒さ。漆黒と言い変えても何ら遜色ない、黒と黒を混ぜて塗り潰したような色をしていた。 「来ましたか」  ボソッと呟く。  直後、彼女の足元に積もっていた雪は一瞬で水に融解し、液体はそのまま水蒸気へと昇華した。  “マナ”を吸い込み、魔法武芸者だけが持つ体内器官の一つ“魔輪”で魔力へ変換。生成した魔力を全身に流すことで、一時的に一般人を軽く越す力を発動する。  それを魔力活性と呼ぶ。  その時に生じた炎の魔力が足元の雪を溶かしたのだ。熱に煽られ、周囲五メートルの雪を溶かし終えた頃、女性の前に十数人もの男が現れた。 「……あ? なんだこの女」  (かしら)と思われる無精髭を生やした男が、女性を目文(めぶみ)する。  じろじろと眺められることに何も思っていないのか、女性は剣の切っ先を(かしら)に向けて一言。 「(わたくし)の名は、アリア・ライドラール。ライドラール家の名に懸けて、貴方たち猟兵団を壊滅させます」  
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