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――師匠はもう五十半ばですからね。
そろそろ引退して、若い者に後を継がせるべき年齢に差し掛かっている。
師匠曰く「俺は生涯現役だ」と鼻息荒くして言っていたけれど、前よりも動きにキレが無くなりつつあることも確か。
知謀の方は幾分も歪んではいないが。
「おいおい、どォした、急に黙り混みやがって。結婚のことなら諦めろとは言わねェが、望み薄とだけ考えてろ。俺の方でもなンとかできねェか対処してみっからよ」
「ああ、いえ。そういうことではなく、そろそろ本題に入らなくてはいけないと思うのですが」
「本題、ねェ。お前にとったら、婚約の方が本題だと思うがな」
「確かにそうですが、わたくしが慌てていても事態は解決しませんから。ここは師匠に任せます」
「ほう? 近々見ないうちに何とも物分かりが良くなったじゃねェか。お前が婚約の事で頭一杯になってるだろォから、今日は話さないでおこうと思ってたのによ」
師匠は破顔した後、急に真面目な顔になり、居ずまいを正した。低い声で言う。
「俺がここ一ヶ月、王都に居なかったのはな。とある遺跡を調べていたからなンだよ」
「とある、遺跡ですか?」
ザルバリアは遺跡が多い。雪で入り口が塞がれていたり、そもそも発見できなかったりという理由のせいか、遺跡を狙う盗賊や猟兵が他国と比べて少ないからだ。
「あァ。それも下手したら、レスベルとレオンハートの秘密が一気に解決するかもしれねェ遺跡だ」
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