第一章 ザルバリアの現実

18/36

5217人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「どんな、遺跡なのですか?」  アリアは師匠と違い、遺跡自体にさほど興味がなかった。  レスベルもレオンハートも、既に死を迎え受け入れた人間。過去の人と言い換えてもいいだろう。  彼らは確かに偉大な事をしたと思う。けれど、この時代の、国の行き先を変えられるのは(現在)を生きる人間だけなのだ。  そんな想いを持つが故に、アリアは過去の偉人に頼ることなく自らの力で国を変えようとしている。  しかし実際、レスベルとレオンハートの秘密が隠されているかもしれない遺跡があるとなると、その秘密を知ってみたいという欲求に駆られてしまうのも当然のことで。  歴史学者が、しいては全人類が知りたい筈の二代英雄の素性や秘密。知りたくない筈があろうものか。  歴史や学問にも詳しい師匠ならさぞかし様々な語句を用いて、その遺跡の事を教えてくれると踏んだのだけれど。 「解らン」 「はい?」 「解らねェンだよ。あの遺跡はどうやら異界に近いみてェだ。力の無い者なら一分と持たずに精神が崩壊しちまうだろォよ」 「異界とは、あれですね。人為的に結界の法則を歪めた物。今の魔法武芸者の中で異界を創れる者がいるとは思いませんが」  遥か昔、まだ魔法を扱えていた原初の時代。その頃の魔法武芸者なら容易く出来ていたのであろうが、今は昔に比べて魔法の熟練度が下がっている。  異界を創るなんて、並大抵の熟練者じゃなければ……。  そして、気付いた。 「そうか……! 今の時代で造れない遺跡なら、レスベルやレオンハートの秘密が隠されている可能性が高い!」
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5217人が本棚に入れています
本棚に追加