第一章 ザルバリアの現実

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「そォ言うこった。そンでな、お前、今からその遺跡に行ってみねェか?」 「え?」  冗談、もしくは聞き間違いかと思ったのだけれど、師匠は無精髭を撫でながらもう一度、ゆっくりと、発音を確かめるようにしながら口にした。 「だからよ、その遺跡にお前、行ってみねェか?」 「じょ、冗談ですよね? だって師匠なら、そんな異界を物ともせずに行けるはずです」 「そォだな。俺なら、もしくは俺と近い実力を持つ者ならあの異界に触れても発狂せずに済むだろォよ。けどな、俺じゃ駄目なンだ。お前じゃねェとな」 「……仰っている意味が、解りかねます」 「そりゃそォだろ。ちゃんと今から説明するさ。お前は、レオンハートやレスベルに対して興味がない。そォだな?」  思わず息を呑んだ。誰にも打ち明けていない秘密を、抉じ開けることすらせずにソッと覗かれ、そして覗かれたことにすら気付かせない師匠の洞察力に、ブルッと背筋が震えた。  どう答えよう。  迷い、決断するまで数秒。  アリアは、小さく頷いた。 「……はい。わたくしは、レオンハートやレスベルに興味を抱き、その事を調べるよりも、星屑の聖座を討滅させることに時間を割きたいと思っています」  師匠を否定するかのように述べた言葉の数々だったが、その否定された本人はケロッと涼しい顔だった。  いや逆に、どこか安堵している風にも見える。 「いやァ、良かったぜ。お前がそォ言わなけりゃ、俺の計画もご破算になってただろォからな」
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