第一章 ザルバリアの現実

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「計画、ですか?」  陰謀、策略。言葉の意味は微弱に違えど、何か不吉な物を感じさせる言葉だ。勿論、師匠がそういう事に“計画”の二文字を使った訳無いのだろうけれど。 「いや、言い方が悪かったな。つまり、こォ言うこった。俺はレオンハートやレスベルに関する物全てに興味がある。遺跡も例外じゃねェ。それはお前も知ってるよな?」 「はい」 「そんな俺が遺跡を調査しても、私情が絡んでマトモな調査になるとは思えねェンだよ。俺の言いたいこと、解るか?」  師匠の問いに、アリアは今までの会話から一つの答えを出した。 「つまり、レオンハートやレスベルに興味を抱いていなくて、尚且つ師匠に近い実力を宿すわたくしで無いと、客観的な遺跡の調査が出来ないという訳ですね?」 「そォ言うこった。どうだ、行ってくれるか?」 「…………」  瞬時に答えられなかったのには、二つほど理由がある。どちらも大切で、アリアのこれからを左右するかもしれない事柄だ。  一つは、星屑の聖座。北方最強と謡われ、師匠の言葉に裏打ちされたザルバリアの国民から英雄視されている猟兵団。彼らを一刻も早く駆逐しなければ、当然のことながら、クーデターに発展するだろう。  ザルバリア王国の現状を鑑みれば、それは遠くない未来に思える。  二つ目は、アリアの結婚。彼女自身は承諾していなくても、流れに逆らえず、うやむやのまま婚約が果たされてしまえば――。  まだ結婚するつもりもないし、なによりも婚約というのは、本当に愛し合った人間同士でするものだとアリアは心底思うのだ。
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