5217人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
先程は強がったものの、やはり、バインツバルド家の子息と婚約すると考えただけで寒気が走る。絶対に嫌だ。汚い表現になってしまうけれど、“吐き気がする”。
遺跡の調査に行く。つまり、ザルバリア王国の王都を離れるという意味に直結する。
アリアのいない隙に婚約が回避不能な段階まで進んでしまえば? アリアのいない内に、電光石火の速業でクーデターが完了してしまえば?
嫌な予感と、悪い想像。
それらが脳裏を過るだけで、アリアは王都から離れられなくなる。ここに留まり、どうにかして婚約もクーデターも防ぎたいと思う。
そんなアリアの心情を読み取ってか、師匠は大丈夫だと強く頷いた。
「お前が王都に不在の間ぐらい、俺が何とかして婚約の話を抑えておく。そのぐらいできる筈だしな」
「……本当ですか?」
「ああ。後、星屑の聖座にしても同じだ。俺が王都にいるンだ。安心できるだろ?」
それは確かに、安心できる。
師匠がアリアの不在を埋めてくれるなら問題は無い。寧ろ、今までの師匠への恩を返す絶好の機会ではないか。
是非もない。
アリアは不安という二文字を、恩義の二文字で叩き潰した。師匠に向かって、約束する。
「解りました。わたくしアリア・ライドラール、師匠の代わりに遺跡の調査を真っ当してくるとここに誓います」
「おう! 結果報告、楽しみにしてるぜ」
最初のコメントを投稿しよう!