第一章 ザルバリアの現実

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 先程は強がったものの、やはり、バインツバルド家の子息と婚約すると考えただけで寒気が走る。絶対に嫌だ。汚い表現になってしまうけれど、“吐き気がする”。  遺跡の調査に行く。つまり、ザルバリア王国の王都を離れるという意味に直結する。  アリアのいない隙に婚約が回避不能な段階まで進んでしまえば? アリアのいない内に、電光石火の速業でクーデターが完了してしまえば?  嫌な予感と、悪い想像。  それらが脳裏を過るだけで、アリアは王都から離れられなくなる。ここに留まり、どうにかして婚約もクーデターも防ぎたいと思う。  そんなアリアの心情を読み取ってか、師匠は大丈夫だと強く頷いた。 「お前が王都に不在の間ぐらい、俺が何とかして婚約の話を抑えておく。そのぐらいできる筈だしな」 「……本当ですか?」 「ああ。後、星屑の聖座にしても同じだ。俺が王都にいるンだ。安心できるだろ?」  それは確かに、安心できる。  師匠がアリアの不在を埋めてくれるなら問題は無い。寧ろ、今までの師匠への恩を返す絶好の機会ではないか。  是非もない。  アリアは不安という二文字を、恩義の二文字で叩き潰した。師匠に向かって、約束する。 「解りました。わたくしアリア・ライドラール、師匠の代わりに遺跡の調査を真っ当してくるとここに誓います」 「おう! 結果報告、楽しみにしてるぜ」
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