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とは云え、魔法を扱える者――魔法武芸者が必ずしもアリアのように、長時間連続して魔輪を駆動させ続けられる、とは限らない。
アリアが異常なのだ。他と比べても、魔輪の活動時間が群を抜けて突出している。抜きん出ている。それはもう――圧倒的に、絶対的に。
アリアだけが、そんな荒業で、この過酷な世界を生き延びることができる。
「ここは……。何とも、静かな場所ですね」
師匠に言われ、辿り着いた場所は物静かな森だった。一キロ離れたところに寂れた廃屋が、数キロ離れたところにやっと小規模な村があるぐらいの、自然そのものが残る森だった。
人間に荒らされた形跡のない、手付かずの森林。雪国だけに生息する特徴的な生物の鳴き声も聞こえる。
アリアは深く空気を吸い、微笑を浮かべた。
「空気が澄んでる……。気持ち良い」
本当にこんなところにレオンハートやレスベルの秘密が遺された遺跡があるのだろうか。
そんな不信感を抱き始める。
――留まっていても仕方ないですし。
取り合えず、歩くことにした。腰に吊るしてある得物、一振りの剣が足を動かす度にカチャカチャと音を鳴らす。ザッザッ、と雪を踏み締めて前へ前へと進んでいく。
一キロほど進んだ頃だろうか。
目の前に、切りだった崖が現れた。ゴツゴツとした岩肌に、ほぼ九十度の斜面。登れないことも無いが、上に到達した所で遺跡は無いだろうと思い、反転しようとした。
その時。
違和感を覚えた。
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