第一章 ザルバリアの現実

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「これは――」  本能が全身に告げる。ここに何かある、と。極めて重要で、アリアが見つけることそのものに意味のある――何かが。  ――この感じはいったい……。  今までに触れたことのない気配だ。(いびつ)に歪み、それでも中身は健全と存在したままで、外の人間にその存在を明るみにさせない。  そんな、気色悪い“モノ”が、  近くにある。  アリアは剣を抜いた。念のためだ。何が起こっても対処できるように。  感じる。解る。  崖の下。アリアの眼前に、何かを防ぎ、覆い隠している結界がある。 「師匠のように、結界に対して詳しくないのならーー」  アリアは剣を振り上げ、大上段からそれを降り下ろした。 「ーー壊すまでです!」  何も無い空気を切り裂く。冷気を断絶し、アリアの黒い剣は雪にブスッと突き刺さった。端から見れば、コイツは何しているだろう、と不審に思われるだろうが――。  アリアには手応えがあった。何かを両断したと云う確信が、掌から神経を伝わって脳髄に走った。  そして、外れなかった。  今まで何も無かった空間に“道”が出来ていた。崖下に続く穴。薄暗く、ほんの数百メートル先が全く見えない。  ここから異界が始まる。  さっきのは異界の表面を裂いただけ。ここからは強靭な精神力と肉体が無ければ、進むのは不可能な人外の巣窟。  ――さてと、ここからが調査の本番ですね。  アリアはゆっくりと、だが堅実な歩みのまま遺跡の中に入っていった。
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