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「あ? 何言ってんだ、このアマ」
「お頭。ライドラール家と言ったら、ザルバリア国内でも有数の大貴族ですよ」
やはりこの集団のトップだったようで。お頭と呼ばれた男は、ふーんと何か考える素振りをして、数秒後、下世話な笑みを浮かべた。
「その女を捕まえろ。俺達、“星屑の聖座”の生け贄になってもらうぜ」
「はい、お頭!」
元気良く手下たちが指示に従う。アリアの周囲に展開し、一斉に得物を手にする。逃げ場がなくなった。
しかし、アリアは慌てずに確認する。
「貴方たちの本当のトップは、ここにはいないのですね?」
「……いねぇが、それがどうした? てめぇは今から俺達に犯されて、それから交渉材料に使わされるんだ。ちっとはてめぇの心配をしてろブハォッ!!」
語尾の意味不明な叫びは男の意思によるものではない。
これ見よがしにため息を溢したアリアが男の顔面に蹴りを入れたことによる副産物である。
一発の蹴撃に耐えきれず、男は無様に雪の上を転がっていく。
「本当のトップがいないのなら、まずは貴方たちを捕らえることにします。覚悟はいいですね?」
声色が変わった事に、他の男たちは警戒心を露にするが。
「……なんだ、このアマ……」
彼らの言葉を振り払うように剣を真横に一閃する。
アリアは腰を低くし、足元に力を溜めて。魔力を練り続けて。覚悟を決めて。
「殺す気はありません。だから、死なないでくださいねッ!」
彼らに突貫した。
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