第一章 ザルバリアの現実

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 遠方からの会話を可能とした力から察するに、当たり前だけれど人間の類いではないだろう。  ならば、何?  おそらくは夜叉に分類される何かだろうと推測しながら、アリアの足は一定のリズムに従い先に進み続けた。  そして突然、視界が晴れた。  今まで狭い洞窟のなかを歩いているような錯覚に見舞われていたが、今は違う。  ここはまさに遺跡だ。  高い天井。壁には古代文字と物語的に場面が変化する“絵”が刻まれている。  不思議な空間だ。異界の気味悪さも存在せず、むしろ此処こそが人間の住まうべき場所なのではないかと思ってしまうぐらい、アリアを心地好くさせた。 『お初にお目にかかる、気骨ある武人よ』  頭に響く台詞に未だ慣れず、アリアが剣を抜き放ちながら振り返ると、そこには説明しづらい生き物がいた。 「え?」  可愛い。それがアリアの初認識時の感想である。  一先ず、身体が人間ではない。ぬいぐるみだろう、おそらくは。大きな丸い耳が頭の上にくっついていて、さながら鼠を思わせる『ソレ』は優雅に一礼した。 『我輩、過去よりこの遺跡を守護するモノ。名は、ラシャ。気骨ある武人よ、そなたも名乗れ。それが礼儀である』  ぬいぐるみは口を開けていない。そもそもぬいぐるみなのだから、口を開いて喋り出したら、それはそれで恐ろしい光景だ。  やはり、何か特別な魔法で、頭に直接言霊をぶちこんでいるのだろう。 「あ、アリア・ライドラールです」
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