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『ほう、アリアと申すか。これはこれは因果な話である。久方振りに合間見える魔法武芸者が、アリアという名を背負っておったとは。これも運命か?』
「あの……貴方は一体……」
解っているのは、身長五十センチばかりのぬいぐるみで。名前をラシャ。本人(?)の言葉を信じるのなら、相当な年月の間ここにいるということだけである。
『成る程。そなたは、我輩がラシャであることも何も知らずに、この遺跡に足を踏み入れたというわけか。通りで、邪念の無い筈だ』
だから、勝手に納得されても困るのだけれど。アリアはそんな不満を抱く。至極当然の反応だろう。
ラシャは頭を下げた。
『申し訳ない。我輩、真の姿をそなたの前に見せること能わず。遥か太古、あやつが我輩にくれたこのぬいぐるみの仮初めの姿で許して貰えると助かる』
「やはり、そのぬいぐるみの姿が本物では無かったのですね」
『勿論。これは、零世界の時に、世界中で愛されたキャラで、名を“ミッキーマウス”と呼んだらしい』
――マウス……鼠ですか。成る程、解りやすいですね。
寡聞にして知らなかったが、それは当たり前だ。零世界、つまりまだ世界が一度も魔法の恩恵に晒されていない遥か太古の世界だ。
文献はおろか、伝承や口伝すら残されていない謎に満ちた世界。その一端を知らされたアリアは、まるで遠い星の過去を覗いている気分だった。
『真の姿を見せるのは勘弁願う。我輩は待つモノであるが故に、待ち人を永劫待ち続けなければならない。“アベル・ディアレス”という少年が、我輩の前に姿を現すまでは』
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