5217人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「……本当ですか?」
『そう身構えずとも、我輩は人間に危害を加える事はしない。勿論、人間の方から何かを仕掛けてきたのなら、遠慮も考慮もしないがな』
思わずアリアは全身を強張らせ、鳥肌を立たせた。
猟兵を倒すのと同様に様々な夜叉を討滅してきたアリアだけれど、このぬいぐるみは違った。
ラシャ自体が虚空夜叉と名乗っていることから、その言葉自体に疑いは無いのだが。
――ただの夜叉じゃ……ない。そもそも、夜叉の概念から越えている……?
「アベル・ディアレスを待っているのは、どうしてですか?」
『答えても良いが、聞いた内容をアベル・ディアレスに教えるでないぞ。それだけは約束してくれ』
「……解りました」
有無を言わせない声音。威圧感。絶対的とも言える存在感に、アリアは首を縦に振るしかなかった。
無論。
アベル・ディアレスという少年に会える可能性なんて、ほぼゼロパーセントに近いのだろうけれど。
『我輩がアベル・ディアレスを待つのは、“あやつ”に頼まれたからだ。会って、話して、戦って、見極めてくれと』
「……見極める? その、あやつというのは、一体どなたで……」
『そんなもの決まっているだろう』
今さら何を聞いているんだ、とぬいぐるみがアリアを見上げる。その姿形だけを鑑みれば可愛いのだが。
アリアを取り巻く緊迫感は嘗て無いほど高まっていた。
『レオンハート・ウォルガナス・シュバルツアだ』
最初のコメントを投稿しよう!