第一章 ザルバリアの現実

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 ここまで驚愕したのはいつ以来だろうか。驚きで声が出ない。はい? と聞き返すことすら億劫に感じた。  意味を持たないと解っていて、 「レオンハート、ですか」  ただひたすらに納得した。 『そう。レオンハート・ウォルガナス・シュバルツアだ。あやつの言動を信じるなら、我輩が会って確かめるべき存在であろう。それに、我輩も断片的ながら彼の少年を見て思うこともあるのでな』  レオンハート。百年前に、人類に再び魔法という名の奇跡を与えてくれた人類救済の英雄。下手をすれば、信仰になるかもしれない偉業の持ち主だ。 「レオンハートと、会ったことがあるのですか?」 『無論、何度も会っておる。あやつが死んでしまい、この世界はより一層つまらなくなった。あやつほど馬鹿みたいな人間は、この世に存在し得なかった』  きっと今、自分は物凄い事実を聞いているのだ、とこの場面で漸く理解した。  レオンハートと出会い会話した存在が、目の前にいて、流暢に言葉を紡いでいるのである。  考古学者や歴史学者が知れば、卒倒してしまいそうな光景であろう。 「え、と。いくつか質問があるのですが、構いませんか?」 『構わん。久方ぶりの気骨ある武人だ。我輩は嘘を言えん。答えられないことは答えられんと言うが、それでも構わないのならば答えよう』 「レオンハート・ウォルガナス・シュバルツアと言いましたよね? わたくしたちの世界では、最後の“シュバルツア”は知られていないのですが……」  本名、レオンハート・ウォルガナス。そう教科書にも書いてある。アリアもそう習い、そのまま覚えた。  ふと抱いた疑問だ。  そんなアリアを小馬鹿にするかの如く、ぬいぐるみは腹を抱えて笑い始めた。
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