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『クククク、あやつめが……。後世にあの名前を知らされたくないからか、わざと名乗らなかったのだな。相も変わらず、面白いやつよ』
「あの名前?」
『すまぬな、気骨ある武人よ。あやつ自身が後世に残したくなかったのならば、我輩が勝手に口を開くわけにはいかぬ』
非常に気になる。
レオンハートの事は何もかもが謎のベールに包まれている。おかしいぐらいに。不自然なぐらいに。彼の事を知るものはいない、という常識は、ここ百年の間で、人類に定着されていった。
その常識を、根本的な部分から百八十度真逆にする存在が発した言の葉。気にならないわけがない。
「では。馬鹿みたいな人間というのは?」
『なんだ……。それも今の人の世には伝わっておらぬのか? あやつめ、我輩の言った事を気にしていたのか?』
ぬいぐるみはアリアを見上げて、
『簡単な事。あやつはな、馬鹿なのだよ。他人任せで人任せ、女好きで甲斐性無し、酒好きで寝るのが大好き。どうだ? 人の世から見たら、こんな馬鹿で使い物にならん人間もおらぬだろう?』
想像と。推測と。理想と。
何もかも違うレオンハートの素顔。もし、仮に本当だとしたらの話であるけれど。
――嘘を吐いている様子はありませんし。
ぬいぐるみを観察して、そんな確信を抱くのもアリア自身どうかと思うが、何故か嘘を吐いていないと確信できる。
不思議だ。
そして、ショックである。
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